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    HERO

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──  オロチチーム  ──

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 悠久とも思える闇の中で彼らが見たのは、突如として現れた“亀裂”だった。
 亀裂はたちまち広がり、中心がミシミシと音を立てて崩れ落ちていく。その隙間から覗くのは無数の光が瞬く世界。そこはまるで銀河のようでありながら、この世の理から外れた異質さを感じる空間だった。
 薄皮一枚を隔てたかのように近く、しかし永遠にたどり着けないと直感するほど遠いその亀裂の向こう側から彼らが何かの気配を感じた次の瞬間、そこから無数の“手”が噴き出た。
 無数の“手”の奔流は闇の中へなだれ込み、そこに揺蕩うばかりだった彼らを飲み込む。何かがひび割れ、崩れる音が響いたと思ったそのときー七枷社、シェルミー、クリスは共に見知った大地の上に倒れていた。

 三人が目覚めてから数日後、彼らはカフェの片隅にて他の客と同じように穏やかな午後を楽しんでいた。
 「やっぱり、僕らにあの光景を見せた張本人がどこかに居るわけだよね」
 クリスはスマートフォンに視線を落としながら、テーブルの上に置かれたジュースへと手を伸ばす。
 「そうね。ただの夢とは思えなかったし」
 「俺達を復活させたい何者かの仕業...って感じじゃ無かったな。少なくともオロチ一族の誰かが起こしたことじゃなさそうだ」
 シェルミーはつい先ほど購入したばかりの雑誌をテーブルの上に広げながら、社はできたてのサンドイッチを頬張りながら返答した。
 クリスはストローから唇を離した後、グラスをコースターの上に置きながらのんびりと言葉を続ける。
 「一瞬だったけど...かなり異質な力だったよね。別の地球意思の仕業って言われても納得しちゃうかも」
 彼の言葉を聞き、社は口に運ぼうとしていたサンドイッチを止める。そして掴んだサンドイッチはそのままに、向かいでぼんやりスマートフォンを弄っているクリスへと目を向けた。クリスは社の視線に気づき、彼の目を見返した。
 「確かにな。けど、そいつが何だって構わねぇだろ? 使えるなら利用してやるだけだ。“招待状”もこうして手に入ったことだし...な」
 片手で豪華な封蠟が施された一通の手紙をひらひらと振りながら、社は不敵な笑みを浮かべて見せた。彼のその表情にクリスもつられて微笑する。
 「社ったら、相変わらず単純だなぁ...けど、それもそうだね」
 二人がそれぞれサンドイッチとスマートフォンへ視線を戻そうとしたそのとき、傍らで雑誌を読んでいたシェルミーが小さな声を上げた。
 「あら?」
 彼女は広げている雑誌を回して社とクリスの方に向けると、誌面の一部を指差した。
 「社、クリス、これ見てみて。あの“手”、この子のコレに雰囲気が似てると思わない?」
 シェルミーが弾む声色で示したのは、『THE KING OF FIGHTERS特集』と書かれた記事の隅だった。そこには前回のKOFにて撮影されたと思しき写真が掲載されている。被写体となっているのは大きな幻影の手を操る一人の少年だった。
 「シュンエイくんですって。写真は粗いけど、けっこうカワイイ顔してるわね♪」
 うっとりと頬に手を添えるシェルミーに対し、社とクリスは一度顔を見合わせた後で写真に視線を落とした。彼女の言う通り写真は遠くから撮影されているためか少し荒く、社は眉間にしわを寄せる。
 「確かに雰囲気はそれっぽいが、こんな写真じゃなぁ...」
 「大会で直接確かめればいいんじゃない?」
 二人が返答すれば、シェルミーは笑顔を崩すことなく雑誌を再び手元に引き戻した。
 「そうね。うふふ、楽しみが増えちゃった♪」
 社は手に残っていたサンドイッチを口へ放り込み、そのまま目の前のアイスコーヒーへ手を伸ばす。クリスもグラスを手に取るが、氷がカランと乾いた音を立てたことに「あ」と短く呟き、店の中を巡回している店員へと声を掛ける。
 「すみません、オーダーお願いします」
 はーいと声を上げて歩いてくる店員を尻目に、シェルミーは雑誌の記事を熱心に眺め、一ページ、また一ページと捲っていく。
 穏やかな午後の空気と店内に流れる冗長なBGMに大きなあくびを一つ漏らした後、社は身を乗り出して机を軽く叩いた。その物音に隣席の女子高生達も思わず振り返ったが、すぐに彼女らは視線を逸らして自分達の会話へと戻っていく。
 「さてと、そろそろ新曲のこと考えっか」
 彼の言葉にシェルミーが雑誌を閉じ、クリスがスマートフォンを机に置いた。
 「ああ、そうだったね。脱線してごめん」
 「復活ライブ、楽しみね~。三人でいい曲作りましょ」
 そうして三人は日常へと溶け込んでいく。
 隣の席で雑談に花を咲かせる女子高生も、向かいで新聞を読むサラリーマンも、眠たげに店内を巡回する従業員も、誰一人として彼らの会話の内容に耳をそばだて注目する素振りは無い。
 そう、年の離れたただの友人同士に見えるこの三人が、人類の滅亡を望むオロチ一族であることなど誰が想像できるだろうか。

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──  餓狼チーム  ──

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夕暮れを迎えたサウスタウンの一角、客足が増え始めた頃合いのパオパオカフェに彼らは集合していた。
 陽気なネオンが輝くバーカウンターから少し離れたテーブル席でテリー・ボガードとアンディ・ボガードは思わず連れ合いの男を見つめた。彼らが料理に伸ばしていた手を一瞬止めたのは、友人、ジョー・東がおもむろに提案したからであった。
 今回の『THE KING OF FIGHTERS』に参加するにあたって、優勝の暁に達成したい目標を誓い合おう――彼の提案した内容は要約すればそういった事である。ジョーの性格を考えれば特に珍しい提案ではないものの、突然の申し出にアンディは微かに首を傾げる。
 「誓いを立てるって...別に構わないが、何でまたそんなことを?」
 「普通に参加して普通に優勝するだけじゃつまんねぇだろ? 負けられねぇ理由もできてモチベーションも上がるし、一石二鳥ってなモンよ!」
 ジョーはそう言って不敵に笑った後、唐揚げを頬張る。そんな友人の姿を見、テリーもまた陽気に笑った。
 「ジョーらしいな。いいぜ、乗った!」
 白い歯を見せて笑うテリーと、その隣で同意を示すかのように好意的な笑みを浮かべているアンディを見、ジョーは満足そうに眉を上げる。彼はフォークを置くと、居ずまいを正しながら二人の方へ身を乗り出した。
 「ヘヘッ、お前らなら乗ってくれると思ってたぜ! じゃあまずは俺の誓いだけどよ...」
 「おっと、それ、今言う感じなのか?」
 「あたぼうよ! いいか? 今回優勝したらだな...」
 アンディの言葉に返答した直後、ジョーはしばらくフルフルと拳に力を溜め、気合の入った言葉と共に腰を浮かせながらガッツポーズを取った。
 「俺はリリィにデートを申し込むぜ!」
 かなりの声量で放たれたジョーの声がパオパオカフェの壁に反響する。他の客の視線も気にならないほどの熱量でこちらを見つめる彼の顔つきに、ボガード兄弟は合点がいった。そもそもジョーがこの事を提案した発端はここにあるのだろう。
 「ああ、なるほど...それは気合が入るな」
 「ハハハ。ジョーの恋路のためにも負けられないな、俺達も」
 そう言ってアンディとテリーは顔を見合わせ、笑顔を浮かべる。
 再び椅子へ腰を下ろしたジョーはジョッキに手を伸ばし、視線をアンディへと向ける。
 「おっし!じゃあ次はアンディな!」
 「俺!? 目標、目標か...」
 アンディは顎に軽く手を当て、考え込んだ様子で口を開いた。
 「不知火流の道場で日夜鍛錬を重ねているが、少し道場に籠り気味かもしれないな。さすがに長期間留守にするわけにはいかないけど、初心に立ち返って武者修行に出るのも悪くないか...?」
 真面目に考え込む彼の向かいでテリーは頷いて見せる。
 「武者修行、いいんじゃないか?」
 「ただ、そうすると誰かさんがお前の名前を呼びながら追いかけてきそうだな~」
 「ジョーは舞を何だと思って...いや、うん、否定できないかもな...」
 ニヤッと笑ったジョーに対して眉を顰めたものの、その様子を想像でもしたのか、アンディの語気が弱くなっていく。アンディは小さくため息をついてドリンクを飲んだ後、今度はテリーに問いかけた。
 「兄さんはどうする?」
 テリーはほんの少しの間を置き、いつも通りの笑みでさらりと答える。
 「そうだな。俺は世界一周してくるか」
 「それじゃいつもと変わんねぇだろ!」
 「確かに。まあでも、それでこそ兄さんらしいよ」
 口角を上げるテリーに対し、ジョーはケラケラと笑った。そんなジョーの様子につられたのか、アンディもフッと口元を緩める。
 三人ともいつも通りの調子ではあったが、いつも通りであるからこそ互いに安心し、信頼できるのだ。誓いがあろうとなかろうと、彼らの本質はいつまでも変わらず、これから先もずっと続いていくのだろう。
 「そうだ。これは誓いとは別なんだが、大会が終わったらマリーや舞も誘って皆でビーチに行こうぜ」
 「ああ、いいね! 是非とも俺達で優勝して、優勝祝いの休暇にしないとな」
 「そんときゃ俺とリリィの仲も進展してるだろうぜ。ま、いい報告期待しててくれよな!」
 外では日も沈んだのか、来店する客足が増え空いていた席に人影が増えていく。さらに賑わいを増す店の中で、三人の笑い交じりの話し声が溶け込んでいった。

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──  三種の神器チーム  ──

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 深夜。地下鉄の駅の構内、闇を湛えるトンネルから吹き抜けた風はその男のコートの裾を翻した。微かに乱れた前髪から覗いた鋭い目は、背後からヒールを鳴らして歩み寄る二人の女へと向けられている。
 「ご機嫌如何かしら...八神庵」
 「ククク...その様子だと、血の衝動にはまだ耐えられてるようだねぇ。つまらない」
 マチュアとバイスーーオロチ一族の一員であり、亡霊の如く八神庵に付きまとう二人の美女はうすら寒く感じるほどの美しい笑みを湛えながら、タイルを数枚隔てた先で立ち止まった。
 「言ったろう? 悪夢は始まったばかりだと。壊れた器から溢れ出た亡者は今も世界中を漂っているのさ」
 「あなたの血が疼くのも、全ては絶望の先触れ...世界に入った亀裂は今もひび割れ、広がっているわ」
 「何かと思えば...下らん」
 構内にボウッと音が響いたかと思えば、電光掲示板の薄い光をかき消すように紫色の灯りが場を照らし出した。どこか禍々しくも、実直なまでの苛烈さを湛えたその炎を見たマチュアとバイスの目が細まる。
 庵は紫炎に包まれた指を曲げ、ゆらりと振り返った。
 「失せろ。さもなくばーこの炎で送ってやろう、地獄へな」
 身を焦がさんばかりの殺意を一身に浴び、マチュアは満足そうに吐息を漏らす。一方、バイスはお気に入りの玩具を見つけた猫のようにニタニタと笑った。
 肩の力を抜いた彼女らの背後で照明が点滅する。暗転する度、二人の姿が紫の灯りに縁どられ、その目がギラリと輝いた。
 「アンタが悪夢の中で必死にもがく姿、特等席で見物させてもらおうか」
 「どうか私達を失望させないで頂戴ね」
 バイスがゆらりと身体を揺らし、マチュアが妖艶に身を乗り出す。そして、彼女らの指が庵をー彼の背後を指差した。
 「運命の時はすぐそこよ...」
 張りつめた緊張の糸を断つように、彼らの真横を轟音と共に回送車両が駆け抜ける。彼が睨んでいたその場所に、既に二人の美女の姿は無い。突風にあおられ、庵は髪とコートをはためかせながら、いつしか炎が消えた拳をゆっくりと握り込む。
 庵の背後でカツンとヒールがタイルを叩く音が上がった。規則正しい足音は真っ直ぐに庵の背後まで迫り、静かな視線をその背中へと注ぐ。  「ここに居たのね。随分と探したわ」
 女の声に八神庵は振り返る。
 凛とした声を紡ぐ女ー神楽ちづるは真っ直ぐに庵を見つめながら、その唇を開いた。
 「三種の神器として今一度、私に協力してもらえますか? 八神庵...」


 空は快晴、流れ行く薄雲を背に鳩の群れが飛び立っていく。
 街の一角、都会の喧騒が薄らぐ公園にて一人の青年が佇んでいた。噴水の音を背に浴びながら、彼ー草薙京はチラッと腕時計に視線を落とす。待ち合わせの時刻まであと一分といったところで、バイクのエンジン音が閑静な木立の間に響いた。
 「ごめんなさい。待たせたわね」
 目の前で止まったスポーツバイク、そこからしなやかに下りる女性へ京は肩を竦めた。
 「あんたにしちゃ遅い到着だな、神楽」
 「交通事故で国道が封鎖されていたの。焦って随分飛ばしてしまったわ」
 「おいおい、まさか焦り過ぎて法定速度を破っちまったなんて言うんじゃねぇだろうな?」
 バイクに一度視線を寄越してから冗談めかして訊ねる京に対し、ヘルメットを外しながらちづるは柳眉を寄せた。
 「そんなことする訳ないでしょう」
 そう返答して彼女は一息つくと、打って変わって真剣味を帯びた視線で京の両目を見据えた。
 「さあ本題に入りましょうか、草薙」
 ちづるのその言葉を聞いた途端、京の横顔からも先ほどまでの茶化すような態度は消える。
 雲が太陽にかかったのか、先ほどまで公園に降り注いでいた陽光の温もりが消えた。うすら寒さすら感じるような影が二人の上に落ちる。
 「前回の大会で現れた謎の怪物“バース”...その中から復活したのは、我々が祓ったオロチの残留思念だけではなかった」
 「ああ...こいつらの事だろ」
 ちづるの言葉を受け、京は自身のスマートフォンを取り出した。  数日前にちづるから送られてきたメールに添付されていた一枚の画像。そこに映り込んでいるのは街中に溶け込む三人の男女――かつて京達がその手で倒し、封印したはずのオロチ一族の姿だった。
 険しくなった京の表情を見つめながら、ちづるは眉を顰め、声色を落としながら言葉を続ける。
 「あれ以降、オロチの封印に何者かの力が干渉し始めているわ。幸い、今はまだ八咫の力で跳ね除けられるほどのものではあるのだけれど...日に日に力を増しているように感じるの」
 「それもこいつらの仕業だって?」
 京がスマートフォンに映した画像を指差すと、ちづるは首を横に振った。
 「いいえ、残念ながらそこまでは分かりません。ただ...オロチ四天王の力にしては何か異質に思えるわ。形容するなら、理そのものを変質させるような...」
 ちづるは言葉を途切る。ひときわ強い風が吹き、木立からざわざわと葉擦れの音、遠くにはカラスの鳴き声が響いた。
 「彼らが何を引き起こそうとしているのか、あるいは彼らもまた巻き込まれた側なのか...一体何が起きているのか、その真実を知るためにはあなたと八神の協力が必要なのです」
 ふと雲間から陽光が差し込む。
 ちづるは改まった様子で京へと向き直ると、その唇を開いて凛とした声を紡いだ。
 「どうか三種の神器として今一度、私に協力してもらえますか? 草薙京...」
 京はちづるから視線を逸らし、足元を睨み下ろす。
 「たくっ、先祖がどうだとか役目がどうだとか俺には関係ねぇって言ってんだろ。それに、八神と仲良しこよしなんてゾッとしねぇな。絶対に嫌だね」  そこまで言い切ると、京は短い溜息を吐く。
 「...って言いてぇトコだけど、そう言ったところであんたが諦めるとは思えねぇしな。今回だけだぜ?」
 彼は顔を上げ、ちづるの視線を真っ向から受け止めた。嫌気で強張っていた顔は諦めとも呆れともつかない苦笑へと変わる。その様子に、不安で陰ったちづるの表情が晴れ、彼女の口元にも笑みが生まれた。
 「ありがとう、草薙」
 しかし次の瞬間には、京はくるりと彼女へ背を向け、声を上げた。
 「ただ、手を組むのはいいけどよ。こっちにも条件があるぜ」
 「条件?」
 「面倒事が片付いた後、俺がやることに一切口出ししねぇなら考えてやるよ」
 肩越しに投げ掛けられた京の言葉に、何故かちづるは一転して苦笑を浮かべる。そして、葉擦れの音にかき消されてしまうほどの小さな声で彼女は呟いた。  「...同じことを言うのね、あなた達」
 「ん? 何か言ったか?」
 「何でもないわ」
 ちづるはバイクへ手を伸ばし、ヘルメットを抱え上げた。彼女はバイクを再び跨ぎながら京へと呼び掛け、彼は釈然としない様子ながらもその姿を見守る。
 「分かりました。目的を果たした後ならば、あなた達の行動に一切干渉しないと誓いましょう。けれど、オロチの封印に干渉している脅威を排除するまでは...三種の神器としての使命を優先し、きちんと協力してもらうわよ」
 「はいはい、“協力”ね。最低限の努力はしてやるよ」
 気だるげな返事にひとつ眉を動かした後、ちづるは来た時と同じようにバイクのエンジンを鳴らしながら去っていった。遠ざかっていく彼女の背を見送った後、京は手にしていたスマートフォンに再び視線を落とした。
 開かれているのは、先ほどのものとは別のメッセージ。送信者を示すスペースには“親父”と記されている。
 「さてと...こっちの面倒事については、どうすっかね」
 困り果てたかのような口ぶりに反し、彼の指はすらすらと一人の人物の電話番号まで辿り着く。
 そして、その番号を迷わずタップすると、京はスマートフォンを耳元に当てながら歩き出した。
 「もしもし、紅丸か? お前に頼みたいことがあるんだけどよーー」

TEAM NAME

──  ヒーローチーム  ──

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タン・フー・ルーの元へKOFの招待状が送付された翌日。
 「此度の大会にワシは参加せんつもりでの」
 開口一番に放たれた師匠の言葉に、シュンエイと明天君は目を丸くした。
 「なっ...!? 何でだよ、じいさん!」
 「えぇ~っ、じゃあ今回は僕達、不参加ってこと?」
 眦を上げて憤るシュンエイ、そしてその隣で悲しそうに眉を下げた明天君に対し、タンは首を横に振る。
 「いいや...今回は草薙京と組んで出場してみなさい」
 「草薙京と?」
 「そうじゃ。シュンエイ、明天君...おぬしらは前回の大会を経て精神的にも成長を遂げておる。今のおぬしらであれば、ワシ以外の格闘家とチームを組むこともできると思うてな。なに、これも修行の一環じゃ」
 タンは航空券を二人へと差し出した。シュンエイと明天君は一枚ずつそれを受け取り、紙面に印刷された文字へと視線を注ぐ。そんな弟子二人の姿を見つめ、タンは目元をわずかに緩めたのであった。
 「柴舟殿に話はつけておる。日本への旅路、気を付けて行くのじゃぞ」


 「で、草薙京の代わりに何であんたが? 二階堂紅丸」
 中国から日本に到着した直後、空港の入り口でシュンエイと明天君を出迎えたのは草薙京ではなく、彼とよくチームを組んでいる男ー二階堂紅丸であった。怪訝な表情をして立ち尽くすシュンエイ、その隣でうつらうつらと頭を揺らす明天君を見るや否や、紅丸は苦笑しながら肩を竦める。
 「その草薙京は“別の用事”で手一杯らしくてな。代理を頼まれたんだよ」
 「全ッ然、話ついてねぇじゃん...」
 呆れ返るシュンエイに対し、紅丸は「同感だよ」と額を押さえた。
 紅丸が京から代理の話を受け取ったのはつい昨日のこと。大門は柔道連盟での仕事が入り、京も“野暮用”とやらでどこかへ出かけており、今回のKOFは参加見送りかと考えていた矢先の突然の連絡だったらしい。
 二人にそう説明した後、紅丸は改めてシュンエイと明天君へと向き直った。
 「俺がチームメイトでも構わないだろ? お前らは他にアテなさそうだし」
 「そうなんだけどさ。一度戦ったことがあるとはいえ...俺達はあんたのことはよく知らないし、それはそっちも同じだろ? もし...」
 もし、俺の力が制御できなくなって、暴走でも始めたら...
 シュンエイはそう言いかけてから口を噤んだ。表情を曇らせながら俯くその姿に紅丸は眉を顰めたが、彼が何かを言う前に「ふわぁ」と大きなあくびが上がる。
 「シュンちゃん、大丈夫だよ~」
 枕を小脇に抱え直しながら、明天君は空いた手でシュンエイの服の裾を引いた。とろんと眠そうな目でシュンエイと紅丸を順番に見回した後、明天君は無邪気な笑みを浮かべてみせた。
 「それにね、先生は修行のイッカンだって言ってたし~...僕ら、これから仲良くなればいいんじゃないかな? だからよろしくね、紅丸さん」  ニコニコと笑いながら手を差し出した明天君の姿を見つめ、シュンエイもまた肩の力を抜きながらぎこちなく笑った。
「...それもそうだな。よろしく、二階堂紅丸」
 「ああ、よろしくな。シュンエイ、明天君」
 三人で握手を交わす。その時、上空を飛行機が飛び立っていく音が響いた。シュンエイと明天君がふと視線を上げれば晴れやかな夕暮れの空と、飛んでいく機体の後ろに連なる飛行機雲が目に映った。
 「じいさんに優勝の知らせを持って帰ってやろうぜ」
 「えへへ、そうだね」
 顔を見合わせて笑い合うシュンエイと明天君の肩をトンと叩き、紅丸は二人へと笑いかけた。
 「さてと、チーム結成祝いも兼ねて何か食いに行こうか。俺の奢りだから、好きなの選びな」
 「ほんとに!? ありがとう紅丸さん! じゃあね、僕、ワギューの焼肉食べてみたい!」
 「おい明天、少しは遠慮しろって...」
 「和牛、焼肉ねぇ。オーケイ、ちょっと待ってな」
 シュンエイは眉を顰め、今にも飛び跳ねんばかりの表情で挙手をした明天君を肘で小突く。対して紅丸は二人の様子を気にする素振りもなく、慣れた手つきで店を検索している。しばらくして、彼はスマートフォンを二人の前に差し出した。
 「この店とかどう? この前ダチと行ったけど味は悪くなかったぜ」
 差し出された画面をスワイプしていけば、黒毛和牛と思しき艶やかな肉の盛り合わせや豊富なサイドメニューの写真が次々と現れる。シュンエイと明天君は思わず感嘆の声を上げてその写真を眺めた。
 「す、すごいな。本当にいいのか?」
 「気にすんなって。お祝いだって言ってるだろ?」
 爽やかにそう言ってのける紅丸の笑顔には、年長者としてシュンエイと明天君にいいところを見せようと見栄を張っているような様子は欠片も無い。シュンエイは紅丸の顔から視線を逸らし、ぽつりと呟いた。
 「意外だな...」
 「ん?」
 「あんた、派手だし軽薄そうに見えっけど。けっこう世話焼きなんだなって」
 「ふふん、こういうギャップを世のレディは好むからね。モテるための秘訣さ」
 その時、明天君が画面をシュンエイへ向けながら、興奮した様子で声を上げた。
 「シュンちゃん見て見て! スイーツもいっぱいあるよ!」
 「マジか! ...うわ、すっげぇうまそう...」

 色とりどりのスイーツの画像に思わずシュンエイの表情が綻ぶ。年相応の無邪気さが垣間見えるその姿を見て紅丸はニヤッと笑い、料理に夢中な様子の二人の肩に腕を回した。  「へえ、甘いもの好きなんだな。今日は好きなだけ食っていいんだぞ、シュンちゃん♪」
 「おい。飯を奢ってくれるのはありがてぇけど...ちょっと馴れ馴れしすぎないか、あんた」
 「シュンちゃん照れてる~♪」
 「からかうなって! たくっ...」
 空港の入り口から遠ざかっていく三人の背を明るい夕日が照らす。
 しかし、彼らはまだ知らない。この数日後、彼らが一人の少女と出会うことを。そして、それが今大会に忍び寄る災厄の序章であることを...。

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